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萩原朔太郎を兄と慕い、詩集「月に吠える」の装幀を行なった田中恭吉。彼の美しい装幀に触れ、僕も三十歳を過ぎたら装幀家になりたいなあと夢見たときもありました。彼は版画家なのですが、彼の詩も好きで。活版を始めた頃、コースター(カード)にプレスしました。

傷みて なほも ほほゑむ 芽なれば いとど かわゆし
こころよ こころよ しづまれ しのびて しのびて しのべよ
  

むなしき この日の はてに ゆうべを 迎へて くるる
ひと日に ひと日を かさねて なに まち侘ぶる こころか
  


こよひも いたく さみしき かなしみに 包まり 寝ねむ
さはあれ まどの かなたに まどかに 薫ゆる ゆうづき
  

痴愚の なみだを ぬぐひて わが しかばねに 見入れよ
あふげば 青空《そら》を ながるる やはらかき 雲の こころね
  

わかれし ものの かへりて 身につき まつはる うれしさ
すこやかよ すこやかよ 疾く かへりね わがやに



これは、田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎の三人が刻んだ木版画と彼らの詩をまとめた雑誌「月映(つくはえ)」の告別号に掲載された詩。その「月映」が刊行100年を記念して、今月28日まで宇都宮美術館で、『月映1914-1915』が開催されています。月映全冊の他に、私家版・油彩画・ペン画と、とっても行きたかったのですが、難しそうです(巡回展には)…。彼らの生き様を垣間見る、たましいに響くような展示になっていると思います。興味がありましたら、ぜひに。


『月映』 1914-1915
宇都宮美術館 今月28日まで

【巡回】
2015年1月17日~3月1日:和歌山県立近代美術館
2015年4月17日~5月31日:愛知県美術館
2015年9月19日~11月3日:東京ステーションギャラリー