『福岡アジア美術館』の多言語化に伴う館内サインのアートディレクションとデザインを行いました。ロゴカラーの黄色をふんだんに使用したこれまでのサインから一新し、館内の内壁に使用されているインド砂岩との調和を考えて、限りなく白に近い落ち着いた砂色のサインをデザインしました。「変わったと気づかなかった」と、仰る方々も。サインは気づかれない方が良いと思っている事もあり(必要なときに見えてくるのが良いな、と)、そういう声が耳に届くのはとても嬉しいことです。

アジアに近い福岡ならではの、日本語、英語、韓国語、簡体語、繁体語の5ヶ国語。日本語と英語に関しては、2月に発売されたばかりの『Monotype社』初の和文フォント『たづがね角ゴシック』を使用しました。欧文書体Neue Frutigerに合う日本語書体として作られている事もあり、すんなりと優しく馴染み、そして安心感を与えることができるので、サインなどにはとても有用な書体だと感じました。福岡に来てくださった皆さんが、心から楽しんで頂ければ嬉しいです。ちなみに、『たづがね角ゴシック』は、福岡アジア美術館の前のビルに入っている『フォントワークス』さんでの取り扱いも始まりました。

多言語化のサインをデザインした訳ですが、観光の方だけじゃなく、地元の方の日常の一部になればという願いもあります。アジア美術館のコレクションはクオリティが素晴らしく、見応えも充分です(コレクション展は撮影可能。そんなサインのデザインも行っています)。それは日々、西洋的なものに包まれて暮らしている中で、改めて自分がアジア人であることを再認識させてくれ、自尊心をも育み、更には自分たちが暮らす福岡という町へのこれまでと違った眼差しと、より一層の愛着を与えてくれるような気がします。ちなみに、現在発行中の福岡アジア美術館のニュースレター「あじびニュース」に僕のオススメの逸品を紹介させて頂きました。5月9日までは、福岡市美術館所蔵のアニッシュ・カプーアの《虚ろなる母》も展示されています。福岡市美術館での展示とまた違った印象があります。この機会にぜひ足をお運びください。