毎日新聞

487605_431617953588967_1158873028_n

今日(3/9)付の毎日新聞、一面に載せていただきました。九州版なので福岡県外でも。ご一読くださると嬉しいです。見続けて下さる方、そして理解者がいるというのは本当に有り難いことだと感じています。以下掲載文。

一つ一つ、手で拾った活字は言葉になって紙に編み込まれる。

 福岡市東区の活版印刷所「青い月」には、大きさや字体もさまざまな40万もの鉛の文字が棚に並んでいる。中川たくまさん(35)が手で刷り上げる一枚一枚には大量印刷にない「手作業の証し」がある。

 中川さんは本の表紙などを活字を使ってデザインする。ブックカバーに小説の一節を活版印刷し、贈ることもある。子供たちの活版体験のために「出張印刷授業」もする。大量出版とは別の道を歩む理由はファッションや郷愁からではない。「消費され、忘れられるものでなく、暮らしを豊かにする物づくりであってほしい」

 昨春、交通事故に遭い左人さし指に後遺症がある。手で職を立てる中川さんには大きな苦痛となったが、妻なつきさん(35)の手伝いもあって、再び活版に向き合えるようになった。「僕を必要としてくれる人たちが笑って暮らせるように」。拾い、組み上げ、贈るのは、文字だけではない。【写真・文 津村豊和】