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ご報告が遅れてしまいましたが、先日『アルバス』で行われたトークに足を運んで下さったみなさま、ありがとうございました。喉をいためており、上手く声を出すことができず、とても聞きづらかったと思います。申し訳ございませんでした。今回、陸前高田の事をみなさんにお伝えできたこと、そして語り合えたことは、本当に嬉しい時間でした。重ねて御礼申し上げます。

話を今年の春に戻します。『リビングワールド』の西村さん夫妻に声をかけて頂き(東北から遠い福岡の僕に声をかけて下さったこと、改めて光栄に感じています)、岩手・陸前高田に行くことになりました。陸前高田市の海、広田湾を望む箱根山。その中腹の眺望の良い場所に秋にオープンする『箱根山テラス』という宿泊・滞在施設のロゴなどをデザインするため。箱根山テラスは陸前高田を訪れる人たちだけではなく、地域の人たちや震災後、陸前高田を離れた人たちにとっても拠り所になるような場所。また、次世代の人たちも含み、地域の木質資源を活かして(木質バイオマスによる地域熱供給など)、エネルギーや経済も地域内で循環する暮らしの実現に取り組む場所。

初めて箱根山に登り、見えたもの。それは、広瀬湾と養殖の筏、そして広田半島と気仙沼方面の山並みでした。凪いだ広田湾は津波でたくさんの大切なものを奪ったことを忘れるほどに穏やかなものでした。山背(やませ)と呼ばれる初夏から夏にかけて三陸沿岸部に吹く、霧のような白い海からの風も見ることができました。それはとても幽玄で、凪いだ広田湾と相まって目に映る景色はこの上ない美しさがありました。

普段はゆっくりと時間をかけてデザインをするのですが、今回、訪れる回数が限られていたこと、オープンの日にちが決まっていたことから、いつにも増して自分を開放して情報をインプットしました。テラスのみなさんに陸前高田を案内してもらったり、ヒアリングを集中的に行ったり(陸前高田未来商店街での時間はかけがえのないものに)、自分の足で歩いたり。とても濃密な時間を過ごしました。

それでも広田湾は陸前高田の皆さんにとって大切なものだと知り、結果、以下のようなロゴに。下の線が広田半島、上の線が遠くに見える気仙沼の山並み、そして穏やかな広田湾に浮かぶ養殖の筏と箱根山から見える景色を単純化しました。ロゴが終わったあとはサインやアメニティのデザインも。ロゴ以外のデザインはこちらから

西村さんがこんな事を綴られています。

2012年の春先に、三陸沿岸部のまち・陸前高田で前向きに生きる数名の人々と出会い、復興に向かう歩みに力添えをしてゆくことになりました。その中で宿泊・滞在施設が構想され、2013年に設計が始まって、今年9月に竣工。「箱根山テラス」という名前で営業を始めています。沿岸部では復興工事がつづき、多くの宿泊施設が満室です。一方、大半の住民はいまだに仮設住宅暮らしです。復興工事そのものはあと数年で収束し、他の府県から出向していた行政職員らも地元に戻る。しかし地域の復興は、そのあとも10年、30年とつづく道行きとなるはずです。「箱根山テラス」は、その海を渡る船としてつくられました。

外からたくさんの人に訪れてもらうのはもちろんですが、何より、そこで働く人たち、そこで暮らす人たちの役に立てることが嬉しくて。岩手〜福岡の距離の遠さはどうにもならないけれど、心の距離は近づくことができたんじゃないかと思います。今回、これから始まる長い航海の出航に立ち会えることができて本当に良かったです。今日も箱根山から朝陽が登り、陸前高田のまちに降り注ぎます。そう思うと太陽は東から登ってくれるのは嬉しいことだなあと思います。朝陽を感じるたび、それは箱根山テラスの汽笛の様で、今頃デッキで珈琲でも飲んでるのかなあと、皆さんの事を思い浮かべます。そうそう、デッキで食べる朝食も格別なんですよ。

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陸前高田 木と人をいかす宿泊・滞在施設『箱根山テラス』
http://www.hakoneyama-terrace.jp/
住所:岩手県陸前高田市小友町茗荷1
電話:0192-22-7088