optima

書体デザイナーのヘルマン・ツァップさんが亡くなりました。いつも楽しく拝見しているドイツ在住の小林章さんのブログで知りました。まだデザイナーにもなっていなかった頃、欧文書体見本帳を見ながら何度もレタリングで書いたのが、ツァップさんの「Optima」という書体でした。佇まいが美しく、品があって、でも主張(余分なストレス)がなくて、時代を感じさせなくて、他のどの書体とも似てなくて。はじめて見て「わあ、きれいだなあ」と思わず言葉を漏らしたときからもう随分と経ちますが、その感動は色褪せることなく、たくさん書体を知った今では、より一層の特別で透明な空気をまとっています。

 デザイナーとしてのはじめての仕事だったプラネタリウムのポスターにOptimaを使わせていただきました。拙さを引き上げてもらったことは否めませんが、今、手にとってもそのときの書体を使えた喜びが手に取るようにわかります。そして今、偶然ですが、印刷が上がってくるのを待っているポスターにもOptimaを。そしてこれからも、届けたい相手が見えないけれど、たくさんの人に誠実に届いて欲しいと願うとき、ツァップさんの書体を使い続けたいと思います。ありがとうございました。心より、ご冥福をお祈りいたします。

追記 つい先日、ヘルマン・ツァップさんのスケッチブックをまとめるプロジェクトも始まったばかりでした。

※写真は、2011年に東京で開催されたツァップさんの展覧会の図録から。