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自分たちが暮らす足下を見つめ、掬い、手を加えながら、新しく共同体をデザインするように活動を行っているレタープレススタジオがボローニャにあり、訪ねてきました。長くなりそうなので2回に分けて紹介したいと思います。

スタジオの名前はAnonima impressori.グラフィックデザイナーであり、プリンティングも行うMassimoさん(写真)、Lucaさん、Robertoさん、そして根っからのレタープレスプリンターであるVeronicaさんの4人で運営されているデザイン事務所兼レタープレススタジオです。Veronicaさんは紅一点なのですが一番技術が高いという、そのギャップもまた魅力的でした(最近表彰されていました)。スタジオにはコンタクトをとってはいたものの、日時までは伝えていなかったのですが大いに歓迎を受け、活版談義に花が咲きました。様々な場所から集められた数台の手引きの活版機や大きな木活字の収蔵棚が並ぶスタジオ内を、Massimoさんが一つひとつ丁寧に丁寧に説明して下さいました。Anonima impressoriは商業印刷も行いますが、持続的な活版印刷の可能性への挑戦や、一部の人たちだけではなくパブリックな活動を通して活版文化の普及に力を注いでいます。Anomimaさんたちほどではないですが、私たちも同じような活動を行っていると伝えるとシンパシーを感じてくださいました。月並みですが志は国境を越える事を肌で感じ嬉しくなりました。

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聞きたかったBODONI展の事も尋ねました。ジャンバッティスタ・ボドニー(Giambattista Bodoni)。ボローニャと同じくエミリアロマーニャ州のパルマで永年暮らした“Principe dei tipografi(活字の王子様)”と呼ばれる活版職人であり偉大なタイポグラファーです。筆記体の癖を排除し、自律性に富んだボドニーは品のある書体で今でも良く見かけます。そのボドニーさんの没後200年にあたる昨年、大々的な展覧会が開かれました。それに連動する形で、Anonima impressoriは、同じくエミリアロマーニャ州のモデナのレタープレススタジオOfficina TypoとトリノのArchivio Tipograficoと恊働でボドニーさんへのオマージュとしてボローニャのイモラ図書館でいくつかの催しを行いました。ちょうど私たちが訪れた時は、ボドニーさんのオリジナルの秀麗な印刷物の展示と活字を巡るディスカッションが行われていました。その後、ボドニーさん存命時の古い手引きのぶどう絞り型の活版印刷機を使って、生誕を祝うポスターをプレスするデモンストレーションが行われました。来場者の皆さん真剣に耳を目を傾ける中、ポスターは限定50部刷られ来場者と、残りは市立図書館とボドニ博物館に寄付されました。歴史ある建造物や伝統工芸などではなく、普段意識しないけども“何となく知っている”ふるさとの活字に改めて市民の関心を芽生えさせた彼らの取り組みに感銘を受けました。加えて印刷は文化であり、文化はすなわち活字であるという文化成熟の高さに何ともイタリアを感じました。ふるさとの活字文化を持つ数少ないまち、長崎だったら図書館などのパブリックな場所でどのようなことができるのか。淡い青写真を描いてみたいと思います。(続・ボローニャのレタープレススタジオへに、つづきます)。

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