bunrindou

以前、福岡市文学館(福岡市総合図書館)の企画展のアートディレクションを行いました。もともと活字好き、本好きでしたがより一層、本というものが、図書館というものが好きになりました。でも残念なことに福岡で暮らす多くの人にとって図書館という場所は「本を借りるだけの場所」なのかもしれません。地域文化を発信・受信したり、また地域活動をサポートしたり、人に出会ったり、経験や感情を共有する対話の場であったりと、パブリックな場所だからこそ、一部の人たちだけのものではない、広場のような居場所に成り得る可能性を秘めていると感じています(それは、せんだいメディアテークやボローニャを訪れてより確かなものに)。そんな事を図書館の方々と話していて。その始まりのような展示が図書館1階のギャラリーで開催されます。活版印刷のこと、そしてこれまで活版に携わってこられた方の顕彰の意味もあり、二重の喜びを感じています。

 前述の企画展でも紹介されましたが、戦後間もない福岡では同人誌が多数創刊され、文学シーンはとても熱を帯びたものになりました。綿々と現在も発行されている同人誌も多数あります。そんな中、原田種夫や火野葦平が関わった「九州文学」や「九州詩人」、「詩文学」といった同人誌を活字にし、印刷を行ってきた鳥飼にある活版印刷所『文林堂』さんの展示が行われます。活版職人の山田さんは、活版の技術に関しては言うに及ばず(例えば先頃の京都での展示「ミエルかみ」の印刷も)、そうした福岡の文学を支えてこられた方で、生前の原田種夫の事を話してくださるときなど、もう興奮しっぱなしです。会場は活版印刷に使う活字や道具の他に、当時の資料や、手書の原稿・台割・レイアウト、校正紙に山田さんの語り(それそのものが文化資源かと)が加わって、本好き、印刷好きの方だけじゃなく、何かをつくるのが好きな人たちにも興味深い展示になっています。9月までと少し会期も長めですので、図書館に足を運ばれる機会がありましたら、ぜひに。

 ちなみに 8月22日(土)、31(土)には実際に山田さんの活版所を訪れ、話を伺える「文林堂を見学しませんか?」が予定されています。参加したいのは山々ですが、ぜひ、まだ活版に触れた事のない方々に足を運んで頂ければと思います。各回10名の定員ですので、お早めのお申込みを(問い合わせ先/福岡市文学館 福岡市総合図書館文学・文書課文学係 TEL092-852-0606)。

福岡市文学館 小企画展「文林堂の活版印刷と福岡の同人誌」
福岡市総合図書館1Fギャラリー(福岡市早良区百道浜3-7-1)
2015年7月23日(木)〜9月13日(日)
10時〜19時(日曜祝日は18時まで)
月曜日、7月31日、9月1日は休館日

文林堂|http://kappanblog.exblog.jp/