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夜ごと、「こんな感じに作ってみました」、「こうした方が良さそうです」、「違うタイプも作ってみました」と、写真付きのメールが『石橋美術館』で子どものワークショップを一緒に行う宮崎さんから送ってきました。怒られるかもしれないけど、実は僕はあんまり確認していませんでした。なぜなら、彼女が子どもたちと一緒に生み出すものを僕は信頼しているから。迷ってはほしいけれど、それが間違った方向にいったなものでない限り、全て受け入れることにしていました。案の定、その日に向けて制度が上がっていきました。足並みを揃えるように、僕の気持ちも夏休みの特別な日を心待ちにしている子どものように、高ぶっていきました。

そして、石橋美術館での子どもたちとのワークショップ当日。宮崎さんが子どもたちを集めて今日どんなことを行うのか説明を。声のトーン、姿勢、所作。一気に子どもたちが引き込まれていきます。それは鍛錬されたものというより、資質だな。といつもながらに感じました。まず展示室に入り、子どものたちに絵の見方を教えていきます。その絵のまわり(額縁)のことも。決して答えを教える訳じゃなくて、感じ方、見え方のヒントを教える。さりげなく鑑賞上の注意も。ざわついていた空気が一気に同質のものになっていきます。時折、保護者からも感嘆のどよめきもあがりました。制作を控えていて、時間が限られていたということもあるけれど、子どもたちから上がった「もっと絵が見たい!」、「はやく額縁を作りたい!」という声は確実に宮崎さんが子どもたちに投げたメッセージへの答えだったと思います。

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次に制作。紙ナプキンでこよりやクシュクシュとした球状のものなど、さまざまな形を作って、それらをダンボールに貼っていく。ただそれだけのことだけど、奥深い。配置や密度などを思案する子どもたちの集中力の高さ。ある程度かたちになったら、外に持っていって金色のラッカーで彩色を行います。一気にきらびやかになる様に子どもたちから、保護者から歓声があがりました。ワークショップは年齢の幅にあった制作度合の調整が難しいところですが、年齢を感じさせない仕上がりになるのも、このワークショップの特徴のひとつだったと思います。それから、ひとりの女の子が彩色をしませんでした。白いまま。それは彼女が好きになったモンドリアンの絵の額縁も白かったから。「いいねえ、いいねえ」と決められたゴールに導くのではなく、子どもが主体的に行ったことに寄り添う宮崎さんの柔軟性も印象的でした。

最後に一同に並べて発表会を。しっかりと絵や額縁を観て、集中して作ったからほとんどの子どもたちが、しっかりとこだわった箇所を説明できていました。改めて、美術鑑賞(観る)+制作(つくる)+制作物発表(話す)と、エデュケーターでありながら、クリエイティブな活動をしている宮崎さんだからこそできた秀逸なプログラムだったと思います。コレクションの活かし方のひとつの提示だったとも。美術の現場でトークと制作と両方ができるのは、なかなか貴重な人材だと思うので、いろんな美術館で行えるといいなあ。彼女は、このようなアートと子どもとを結ぶ活動を「open door art projects」と名付けました。今後、子どもたちにとって一見重そうなアートの扉も、きっと開いてみたくなるような軽やかなものになっていくでしょう。「この扉、開けても良いんだよ」と、扉の横に立っているのが彼女だったら、なおのこと。

記念撮影。石橋美術館HPより

記念撮影。石橋美術館HPより

ワークショップのレポートが石橋美術館のブログで行われています。
open door art projectsについては、ハッシュタグ #opendoorartprojects で。