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今年最後のご挨拶を。独立して10年目。今年は心から充実を感じる飛躍と結実の年になりました。「誰もが押し寄せる所なら誰かが行く。誰も行かない所でこそ、我々は必要とされる」。と、ペシャワール会の中村哲さんの言葉を傍らに、回り道や遠回りをしながらも、自分に正直に、思案と行動を繰り返し続けてきた10年でした。そして、デザイナーの肩書きを外してプランニングディテクターとして歩き始めたこの一年目。自分一人では決してできない事を、たくさんの方々のお力をお借りして成す事が出来ました。本当にありがとうございました。これからも血が通って、温もりがあって、愛がある。そんなデザインを続けていきたいと思います。

個人的なことを少し。一昨日。12月になってようやく自分で珈琲をネルドリップで淹れました。『珈琲美美』(営業再開されています。5日まで正月休み)の森光さんが最後に焙煎した珈琲で。香りと蒸気と森光さんとの記憶とが、やさしく身を包んでくれました。多忙を極めた今年最後の小休止になりました。その真っ直ぐな仕事や、知的で底なしの好奇心、そして人間味溢れるやさしさ。あこがれは永遠になり、淋しさも尽きず、ふと立ち止まると泪が溢れます(しっかりしないといけないと思いつつ…)。ある日、「森光さん、最近いろんな出会いやイベントが多くて今が一番、楽しいでしょ」。と尋ねると思いもよらぬ返答でした。「いやあ、お店を出した頃から10年ぐらいの間かなあ。お客さんが本当に来なくてねえ。子どもは生まれるし、家も火事になるし。本当に大変だったよ。でもあの頃が一番楽しかった。あの頃があるから今があるんだと思うよ」。その言葉に僕たち夫婦は随分と救われました。そして森光さんご夫妻のように、深く人生を味わって行きたいと。今を生きたいと。そんな気持ちがより一層つよくなりました。

節目の10年を過ぎて11年目。森光さんがいないのは不思議でなりませんが、何か力を与えられたような気もしています。恥ずかしい仕事は出来ません。これまで以上に思案と行動を重ね、より意味のある仕事を行っていきたいと思います。その行為の繰り返しが、少しでも世界の痛みを和らげ、より良い未来をつくることに繋がればと願っています。

みなさま、今年もお世話になり、本当にありがとうございました。また、このwebサイトに遊びにいらして下さりありがとうございました。みなさまにとって幸多き一年となりますように。それでは良いお年をお迎えください。