民俗学とデザイン。と、旅する自転車。

イーハトーヴへ。

イーハトーヴ(岩手)行きのチケットをとった。何かを“計画”することを臆してしまうし、体力の自信もないが、行けない要因を確かめるより、行ける方法を見つけようと思う。そんな日常の細部が、前を向かせてくれる。子どもの頃から、いつか、宮澤賢治さんの故郷、岩手へ行きたいと思っていた。その“いつか”は今年だったのかもしれない。今となっては恥ずかしい想い出だが、妻に初めて贈ったのは、高村光太郎さんの詩集だった。賢さんと慕う光太郎さんが装幀した「宮澤賢治全集」は、僕の中で一層、美しさを増している。そんな二人が暮らした花巻へと。妻は妻で、啄木さんが、好きだと言う。「友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」と、この詩が好きだと言う。ちょうど、没後100年。これも何かのめぐりあわせだと思う。遠野へも。今年が柳田さんの没後50年とはこれもやはり、何かのめぐりあわせだろう。民芸とデザインは語られることは多くとも、民俗学とデザインとは、なかなか語られる事がない。けれども、物そのものよりも、もう少し俯瞰で、人々の暮らしや地域を鑑みると、やはりこれからはデザインの面でも民俗学的見地の援用は、ますます必要になってくると感じている。民俗学に関しては未だ、入口付近でうろうろとしているに過ぎないので、扉を開けてみようと思う。

励まされる日々。それは確かに生きる活力となり、人生の有り難みを感じさせてくれる。震災後、親愛なる友人が暮らす岩手へと、すぐには動けなかった。少し話せるようになったら、そばに行って励ましたいと思っていた。大げさなものではなく己の営為として、関わり続けれる事も見つけてきたいと思う。“いつか”という淡く不確かなものでなく、この夏に。

子どものデザイン

近しい人には話していましたが去る5月のはじめに事故にあい、救急車で運ばれ手術をしました。利き手である左手が、今後、思う様に動かせなくなりました。新しく人に会ったり、人の中に入っていく勇気と体力が低下しており、しばらく療養しようと思っています。ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくおねがいいたします。

 

そのようなこともあり、身体的負担が大きいので、参画していた福岡市が進める「ミニふくおか」も降りました。ミニふくおかとは、子どもの参画を目的としたドイツのミニミュンヘンをモデルにしたもので、今年の夏に開催されます。子どもたちが「まち」のしくみを知り、「まち」のルールをつくり、さまざまな「仕事」に着き、まちで働き、人とかかわりあいながら、暮らすことを体験します。もう5年程前でしょうか、子ども参画のまちづくりをすすめる木下勇さんと、敬愛する元愛知児童総合センター長の田嶋さんの話を、はるばる東京まで聞きに行きました。いつか福岡でも。と、思っており、福岡で暮らす子どもたちに分け隔てなく“招待状”を送れるせっかくのチャンスを棒に振り残念でなりません。また、子どもたちで編成されたまちのルールを決める「子ども実行委員会」もすでに動き始め、子ども達とも関係を育んでいけていただけに、こちらも無念です。でも、これまでずっと、福岡の子どもたちに寄添い、子どもたちの環境を支えて来た「子ども文化コミュニティ」さんと、「PLAY FUKUOKA」さんが運営を行ないます。必ず子どもたちが希望を持てる素敵なものになると確信しています。

 

これまで、子どものデザインに関しては、自覚を持って取り組んできました。それにはやはり、かかわりを持った、目の前の社会的養護を必要とする子どもたちの存在があります。そこを見過ごしては、子どものデザインはできない。と、自分の非力さを感じながらも、行なってきました。児童養護施設に通い、施設長さんと話しをすると、随分と社会から見落とされていることを感じます。福岡にも虐待や親の病気、死別などで親と一緒に暮らせない子どもたちはたくさんいます。施設は今、家庭的な環境化での養護へと変換期を迎えていますが(福岡市の里親普及率は本当に素晴らしいです)、子ども達は未来であると同時に、“今”でもあります。施設で暮らす子どもたちは、18歳になると出て行かなければならず、現在、仕事を選ぶ選択肢もかなり限られています。うまく社会に適合できずに、戻ってくる子、社会の暗部に消えていく子どももいます。でも、それは言わずもがな子どもが悪い訳ではありません。地域で日常的に子どもたちが、おとなとかかわりあいながら生き、必要とされていることを実感できること。そして、さまざまな仕事を知り、学ぶ(選択できる)環境があれば、状況は変わっていくはずです。希望を持って欲しい。そして何より不安を持たせないというのが、同時代を生きる僕らに、まちに、市に出来ることなんじゃないかな、と思っています(意識が変わって行く、その起因にミニふくおかがなれればと)。先にアルティアムで行なわれたイタリアのレッジョ・エミリアの取組みを紹介する展覧会。まちぐるみで、分け隔てなく子どもを育てて行くその本質的な背景(土壌)には、6割を越える里親の普及率、社会的養護の浸透(倫理的に当たり前のものとして)も関係しているのかと思い、今年の10月に再度イタリアに探りに行く計画を立てていました。が、それも難しくなってしまいました。

 

敬愛して止まない緒方貞子さんが、様々な会見、様々な紙面で繰り返し語られる、「一部のものにならない、格差を出さない、どこかを置き去りにしない、すべての人を対象にする…」、包含・包摂的(インクルーシブ)という概念は、個人的にデザインに置ける真理だと思います(先のクリエイティブディレクションを行なった「ナガサキリンネ」のコンセプトワークでも、ここを大切にしました)。社会的養護を必要とする子ども達が、いわゆる、一般的な家庭環境化で育った子ども達とフェアなスタートラインに立って、社会に出て行って欲しいと願っています。その為に、ささやかながらも自分に、デザインでできることを信じて、また力をつけて、戻ってきたいと思っています。

 

追記
福岡で公開されるかわかりませんが、親と一緒に暮らせない子どもたちと、“隣り合う”大人たちの日常を描いたドキュメンタリー「隣る人」が公開されています。もし観られる環境にいらっしゃっいましたら、ぜひ。

 

 

artlier

アジア美術館内に、福岡市の文化芸術発信基地、「文化芸術情報館アートリエ」がリニューアルオープン。VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)刷新のデザインを青い月で(こちらで、worksを更新しています)。昨年暮れから始まり半年ほどの仕事となり、またとても光栄な仕事で、感慨深さもひとしお。アートが福岡で暮らす人達にとって、より身近なものに、暮らしの中のひとつの拠り所となればと願っています。ちなみに現在、リニューアルイベント「アートリエへ、ようこそ」が開催中です。

 

 

文化芸術情報館 アートリエ(アジア美術館7F)

http://artlier.jp/
開館時間/10:00~20:00
休館日/毎週水曜日(水曜日が休日の場合はその翌平日)、12月26日~1月1日
問い合わせ/〒812-0027 福岡市博多区下川端町3-1リバレインセンタービル7F 福岡アジア美術館内
TEL:092-281-0081 FAX:092-281-0117

Don’t You Worry ‘Bout A Thing

壊れたランドナーを、幼なじみのおじさんのところへ(@長住サイクル)。子どもの頃から変わらない、わくわくするおじさんの工場(こうば)。また、乗れる日を信じて、身体的な負荷を軽減する為の相談を。「また、乗りたいと思ってくれるのが、おじちゃんは嬉しかあ。心配せんで良か、見た目を損なわずに、たくまくんにぴったりに仕上げるけん」と、嬉しい言葉。

あの日から本当に、かけがえのない人達に励まされている。「何も心配しなくていいよ」、「サポートするから」と、その言葉、その想いに。

mic comersy

福岡市中央区薬院に、スイーツカフェ「mic comersy」が、5/10日にオープン。しっとりとしたスポンジが自慢の数種類のケーキとパフェ、エイジングコーヒーが楽しめるお店。オーナーは、お酒を楽しんだ後に甘いものが食べたくなる方に、特におすすめだと。なので営業時間は昼下がりから夜ふけ(夜1時)まで。ロゴも夜(月)が太陽を導くイメージに。夜や月、星などを題材にした絵本も店内にいくつか。こじんまりとした空間で、甘く静かな夜ふけを、どうぞ。ちなみに、5/10日は、元Cafe De Kaffaのオーナー、平田さんも店頭に立たれます。

mic comersy

福岡市中央区薬院 TEL 092-713-5445
OPEN 13:00〜25:00 CLOSE 火曜日

ミラノ

石と霧のあいだで、ぼくは休暇を楽しむ。
大聖堂の広場に来てほっとする。
星のかわりに夜ごと、ことばに灯がともる。

生きることほど、人生の疲れを癒してくれるものは、ない。

ウンバルト・サバ詩集より(翻訳:須賀敦子)

丁度、去年の今頃はイタリアに。五月の風が、本当に清々しかった。
今度は、サバさんの故郷、トリエステにも行ければと思う。
と、その前に、リハビリをがんばろう。

memories of tomorrow

Life is what happen to you while you are maiking other plans.
“人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のこと”

星野道夫さんの友人の女性ブッシュパイロット、シリア・ハンターさんの言葉。僕はこの言葉をこれまでどちらかというと、ポジティブなものとして捉えていた。極論を言うと、ポジティブであることには変わらないかもしれないけれども、この言葉がこれほど響くことはかつてなかった。充分に注意はしていた。だが、事は起こった。どうしようもなかった。

昨日と今日とでは世界が変わってしまったが、こうして僕は今も、生きている。まだ僕を必要としてくださる人がいると捉えたい。また、献身的に支えてくれる妻に心から感謝したい。身体はひとつしかないし、与えられた時間も限られている。毅然として、精一杯、生きていきたいと思う。

BAKERY タツヤ

福岡市南区花畑にパン屋「BAKERY タツヤ」が5/7日にオープン(5/5日プレオープン)。“ブルックリン”をキーワードで進めてきて、男らしくも気持ち良い空間に。設計は、spumoniの有吉さん。ロゴやサイン、グラフィックなどを青い月で。ちなみにオーナーはタツヤさんではなく、ロゴにも関係していて、その話は次回に。

パンの種類は食事やお酒に合いそうなハード系をはじめ、幼稚園がすぐ隣にあることもあり子どもが好きなパンもいくつか。いち押しはデニッシュで毎日数種類のデニッシュが店頭に並びます。7日は先着100名様にパンのセットのプレゼントもありますので、ぜひ。

BAKERY タツヤ
福岡市南区花畑2丁目45-29 TEL 092-408-7760
OPEN 9:00〜18:00 CLOSE 月曜日・第三日曜日

想いが原点

「手の間」に僕らのことが掲載された。しかも巻頭特集。恐れ多くて、本当に身が引き締まる想い。正直、僕らで良かったのだろうか、と今でも。でも、「想いが原点」というテーマに載せて頂いたのは、若輩者ながら、本当に嬉しい。失敗に失敗を重ね、これからも失敗を重ね、空回りもするだろうけども、「想い」だけは大切にしていきたい。

今回、記事を書いて下さった正井さんには心から御礼を言いたい。4年ほど、ずっと追っかけて下さった。迷いや戸惑い、そして、ためらい。それらをこちらから話すこともなく察し、そっと寄添い続けて下さった。初校はもっと熱の籠ったものだったと聞く。自分のことのように思って下さっているのが、何よりうれしい。そして、その想いがどれほど、僕にとって心強かったことか。したためられた手紙に何度励まされたことだろう。それから、今回、編集長である田中さんからも本物のプロの仕事というのを見せて下さった。簡単に“もの”が生まれていく中で、改めて“立たせて行く”ということと、“伝える”ということへの、魂と真髄を見させて頂いた。糧にしたい。

紙面には紙漉思考室さんの和紙ができる工程や原料の詳しい話も。前田さんから和紙の話を聞いていて、わかっていたつもりだが、やはりまるでわかっていなかった。自分の教科書にもしたい。田中さんから嬉しい誘いがあり、9月の初めに新しくなった手の間のギャラリーで、青い月と紙漉思考室の仕事展をすることとなった。めぐりあわせと導きに、心から、心から、感謝を。

しこふむ#1

最近、県庁に通うようになった。新緑の美しい季節。この木立を自転車で抜けるのが気持ち良い。気付けば、口笛かハミング。

水面下で進んでいた福岡県広域地域振興課の宗像・糟屋北部地域のプロジェクトが公になった。新宮町・古賀市・福津市・宗像市の頭文字をとって「しこふむ」。その「しこふむ」地域が連携して産業振興を目指していく。三年計画で、その第一回実行委員会が開催された。県と、四市町村の担当課と、各商工会が揃ったその会議に参加を。まだ数回しか訪れていないが、しこふむ地域はすべて海に面していることもあり、海産物の印象が強いが実は赤間、畦町、青柳と唐津街道でもつながっており、歴史ある商品もいくつかある。海の道と民の路から生まれた商品が、どう社会が求めるものに変わっていくか。ますます“デザイン以前”に関心が高まる、昨今、この事業を俯瞰で捉えて行ければと思う。まずは6月、フォーラム