しこふむ#1

最近、県庁に通うようになった。新緑の美しい季節。この木立を自転車で抜けるのが気持ち良い。気付けば、口笛かハミング。

水面下で進んでいた福岡県広域地域振興課の宗像・糟屋北部地域のプロジェクトが公になった。新宮町・古賀市・福津市・宗像市の頭文字をとって「しこふむ」。その「しこふむ」地域が連携して産業振興を目指していく。三年計画で、その第一回実行委員会が開催された。県と、四市町村の担当課と、各商工会が揃ったその会議に参加を。まだ数回しか訪れていないが、しこふむ地域はすべて海に面していることもあり、海産物の印象が強いが実は赤間、畦町、青柳と唐津街道でもつながっており、歴史ある商品もいくつかある。海の道と民の路から生まれた商品が、どう社会が求めるものに変わっていくか。ますます“デザイン以前”に関心が高まる、昨今、この事業を俯瞰で捉えて行ければと思う。まずは6月、フォーラム

sweet cafe#1

薬院で進行中の“夜”のスイーツカフェ。手書きで起したロゴのアイアンのサインが取り付けられた。お酒を呑んだ後に甘いものを、と。夜1時までエイジングコーヒーとスポンジが売りのスイーツが楽しめる、カフェ。

もう何年も前に、デザインした喫茶店のロゴを気に入って下さっていて、大事にショップカードも持っていて下さり今回、お話を頂いた。そういうのは、本当に嬉しい。そして、後から知ったのだが、実は僕もオーナーがとある喫茶店で働いていた頃、珈琲を点ててもらったことがあった。もちろん、その時、こうして出逢うことは知る由もない。

「人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で、無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根源的な悲しみは、言いかえれば、人と人とが出会う限りない不思議さに通じている〜旅をする木〜」

と、ふいに星野道夫さんの言葉を想い出す。 街角に生まれる新しい灯火。その灯火に誘われ、扉を開けた人に、秘かに新たな物語が灯ればと、想う。

bakery#1

南区花畑で進行中の現場にアイアンサインが取り付けられた。「これぐらいまでしか再現できませんでした」と、現場監督。何を仰る、ロゴの歪なエッジをこれ以上ないくらい再現してくださる。自分もいつか、その高みに行ければと思う。他にも、本当にきめ細やかで、抜かりなく仕事が美しい。さまざまな職人さんと仕事をするのは、自分にとっても良き勉強、良き経験となる。オープンは、5月7日。オーナーもますます、意気高まっている。

神の港

福津、宗像方面で地域振興の仕事が始まったので、フィールドワークを兼ねて、旅する自転車“ランドナー”に乗って宗像の先、鐘崎漁港まで。

“神の島”と呼ばれる沖の島に渡る瀬が、神湊(こうのみなと)だったりと、常人が拠り所としてきたものが、何かと垣間見える土地だと思う。繰り返し訪れ、考察を続けたいと思う。

その先へ

今、手元に先日、福岡県立美術館で開催された「糸の先へ -いのちを紡ぐ手、布に染まる世界」の図録がある。展覧会自体が美しかったのは言うまでもないのだが、僕はこの図録が好きだ。編集者の想いがひしひしと伝わるそれが。自分を“その先へ”連れていってくれる一節があるので、ここに紹介したい。

“現代において何事も「広げる」ことがもてはやされている。知識を広げ、仕事を広げ、ネットワークを広げと、どれだけ多くのことをコミットできるか試されているようだ〜中略〜自身が立つ足元の地平を横へ横へと闇雲に広げていったところで、それがせいぜい蜘蛛の糸か今にも割れそうな薄氷のごときものでできているのなら、その上を歩くのもままならない。それよりもこの足元から深く掘り下げていけば、まるで地球の裏側にでも彫り貫いたかのような未知なる空間が広がっているかもしれないのだ。たしかに効率的ではないし、そんな広がりに到達できるにしても生きているうちには無理かもしれない。でも、それでもいいと思えるのは、自分が生きているのは自分ひとりの力ではなく、家族や友人、自然、歴史、未来、あらゆるものとつながって生き、生かされていることが腑に落ちているからだろう。あらゆるものとつながりながら生きて在る訳だから、あらゆるものとつながろうと今さら手を広げる必要もない ”

「すでにつながっている訳だから、それを“ほどく”作業がこれからは必要なんじゃないかな」。そんなことを話していたのを最近、よく思い出す。中に向かうことが即ち外に向かっているということも。“営業に”ならないかと発することを臆していたけれども、己の“営為”として、いろいろなことのその“もつれ”をほどいていくために、深く掘り下げていこうと思う。月の引力の強い、今宵からふたたび。