東へ南へ、パン屋さんを

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BAKERYタツヤさん(バゲットますます美味しくなっていますよ!)と、Pain stockさん(FACEBOOKページが始まりました。シュトーレンも!)、の袋のデザインが同時期にスタート。ゴミにならずに、まちの小さな風景になるような袋をデザインできればなーと思います。それから。みよさんのお店、うーぱんベーカリーが場所が変わってリニューアルオープン!自分の事のように本当にうれしいです。

長文が続いたのと長文が続きそうなので、今日は短く。普段の移動は列車か自転車なのですが、この季節は本当に目移りします。紅葉は歳を重ねるほど美しく感じるものなのでしょうか。眼に映る光が本当に眩しいです。口笛はKings Of ConvenienceのRule My Worldで。一層、気持ち良くなってくると乗りながら歌っています。

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ナガサキリンネを終えて

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「去年、売られていた○○、今年は持ってこられてないんですか?」、「ああ、今年は持ってきていないです。来年、持ってきますね」、「良かった。来年たのしみにしていますね」。先日の『ナガサキリンネ』で聞こえた何気ない会話。目まぐるしい早さで様々なものが消費されて行く中で、こののんびりとした時の流れは、「市」としての正しい道を歩んでいるなあと(生業の歴史にも同じようなくだりもあり)、嬉しくなりました。まだ公式での発表はあっていませんが、前回より下回るものの、今回も1万人を超える人たちが長崎県美術館と出島に足を運んで下さいました。心より御礼申し上げます。また、個人的にも嬉しい出会いがたくさんありました。本当にありがとうございました。会場のそこかしこで生まれた、朗らかな人と人との触れ合いは層となり、会場全体をあたたかな空気で包んでいました。長崎で暮らす人たちがめぐりつながり、自分のまちをもっと好きになり、そしてより豊かな暮らしを作っていけるように。ナガサキリンネが、ますます長崎で暮らす人たちの暮らしの中の大切なものへと育っていければと願います。

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今回、これまでの企画展やワークショップに加え、同世代はもちろん、次の世代の人たちに生の声に触れられる場ができたらと思ってトークを設けました。僕のトークに関しては後日綴るとして、長崎県美術館の屋上で行われたトーク「人が集まる場をつくる」。そこには赤ちゃんから年配の方まで老若男女問わず集まった、本当に奇跡のような風景でした。長崎の空と稲佐山と長崎港に見守られて。それは未来の長崎を予感させるもので思わず泪してしまいました。

それから。一年を通して長崎を感じれるものになればと、今回カレンダーを2種類デザインしました。カレンダーの売り上げは、行政や助成金、協賛金に頼らず自立運営を目指すナガサキリンネにとって重要な運営資金になります。長崎に旅行に行かれた際はぜひに。販売店の詳細はこちらから。

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最後にちょっと個人的な事を。今年の始め、多摩美のプレデザインの授業で話をしました。ナガサキリンネの事も少し。その際、聴講して下さった神奈川の手ぬぐい作家の『ZUCU』さんが、僕の話に何かを感じて下さり、なんとマーケットに出展作家として参加して下さいました。本当にびっくりしたのと同時に、えいっと遠く九州まで来て下さった事(初めての関門海峡越えだったそうです!)、本当に嬉しかったです。知り合いもいなければ、土地とのつながりもない中で、自分を表現するというのはリスクは当然ですが、本当に勇気が必要だったことだと思います。ZUCUさんのその行動に応えることができるよう、一層、日々の仕事に励んでいきたいと思います。手ぬぐいも大事に使わせて頂きますね。雨に濡れた長崎の石畳のようです。

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きおく×キロク

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“記憶は、過去のものではない。それはすでに過ぎ去ったもののことではなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。とどまるのが記憶であり、じぶんのうちに確かにとどまって、じぶんの現在の土壌になってきたものは、記憶だ。記憶という土の中に種子を捲いて、季節の中で手をかけて育てることができなければ、ことばはなかなか実らない。自分の記憶をよく耕すこと。その記憶の庭に育っていくものが、人生とよばれるものなのだと思う”。詩人の長田弘さんの『記憶のつくり方』より


たまに思い出し、噛み締めるように味わう言葉です。写真は、10年以上前にデザインした福岡県立美術館(ケンビ)のリーフレット。誰かの為に作ったものが気付けば自分の土壌ともなって、記憶になり、記録にもなっています。まだ駆け出しの頃、美術館に足が遠い人こそ、美術館という場を必要としているかもしれない。気分を高揚するだけではなく、慰めたり、解したり、魂をさすってくれるような場にもなるのかもしれない。じゃあ、美術館が“届いていないのなら”、ここにいるよと手を振りたい。と、頼まれてもいないのに勝手にリーフレットをデザインして、学芸員の竹口さんに見てもらいました。竹口さんがその想いに応えて下さり、正式にデザインすることになり、このようなリーフレットが生まれました。竹口さんとそれを作りあげるまでの時間というものは、アートを知らなければデザインも知らない僕にとって至上のレッスンで、今想っても僕が人生で携えている数少ない宝石のひとつです。時が流れ、多少なりともデザインができるようになった今、当時の拙さや未熟さがとても愛しく思えます。この仕事があるおかげで、僕は今もデザインの世界で(一番外の輪郭付近)で流されることなく、自分の速度で歩み続けていられるのかもしれません。そんな自分の思い出を思い出さずにはいられなかった、福岡県美術館での展覧会「とっとっと? きおく×キロク=」。チラシにはこんな言葉が綴られています。


あなたが大切にとっている思い出はどんな思い出ですか?それは写真や映像にうつっていますか?あるいは心のなかに残っていますか?いまは思い出さなくても、いつかふっと再生されるものもあるかもしれません。なかには思い出したくないものもあるでしょう。思い出は過去のものですが、わたしたちはいつも思い出とともに歩いています。急がず、ゆっくりと、どこまでも歩いていけることを願って、この展覧会をひらきます


50周年を迎えた福岡県美術館(福岡県文化会館)の記憶や記録を展示する第一部「思い出の文化会館」。ケンビの収蔵品の中から記憶と記録を題に選定されたものと、地元福岡を中心に活躍中の若手作家6名の作品を展示する第二部「まざりあうわたし」。そして、「東北記録映画三部作」や出品作家さんたちによるトークなどで構成された第三部「ともに歩いていくために」。今回の企画には竹口さんの明らかな意志を感じました。攻めているなあと。美術館という言わば誰かが表現したもの(見えるもの)を鑑賞する場で、おぼろげで、あやふやで、でもやわらかい「記憶」という形もなければ見えないものを展示するなんて。でも記憶というものは誰しもが持っている大切なものでもあって。すなわち美術館というものが、美術に興味がある人たちだけでなくて、誰のものでもあるんですよ。という竹口さんがずっと抱えていた想いのひとつの結実だと感じました。それは決して大声ではないけれど、どこまでも(未来にも)届くような澄んだ声でした。その声は展示会場にも(控えめだけど力強く)。展示会場には作品を説明するキャプションがありませんでした。でも、作品と作品とをつなぐように「言葉」がありました。それは本のページの下に付いているノンブルなようなもので、自分が今、どこにいるのかを教えてくれます。それは時に寄り添い、時に問いかけるもので、鑑賞者の心の有り様で、先(未来)にも進めば、前(過去)にも戻れるものでした。展覧会は絵画を鑑賞したというよりは、思い出をテーマにした短編集を読んだような印象でした。ずっと浸っていたい読了感のようなものが今も残っています。

期間中は「東北記録映画三部作」の上映や、映画のプロデューサーである相澤さんを交えての観覧者同士の対話、九大の田北さんを迎えての思い出(記憶)トークと、来場者同士の記憶を渡し合うワークショップもありました。この記憶を携えてまた、次の場所へと歩んで行けたらと思います。このような展覧会が自分が暮らす町で開かれたこと、本当に嬉しく思います。会期は明日まで。クロージングトークも開かれるそうです。福岡で紡がれる、きおくとキロクにぜひ触れてみて下さい。

もうひとつの世界

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久しぶりの更新になりました。秋ですね。ひと雨ごとに冬が近づくのでしょうね。綴りたいことはたくさんあるのですが、映画の話を。いま、KBCシネマで、イタリアのジュゼッペ・ピッチョーニ(Giuseppe Piccioni)監督の『ローマの教室で(原題:赤鉛筆、青鉛筆)』と言う映画が上映されています。ピッチョーニ監督作品によく出ているベテラン女優マルゲリータ・ブイと、『明日のパスタはアルデンテ』のリッカルド・スカマルチョと(『明日のパスタはアルデンテ』はコメディ映画でありながらストレートにLGBTを描いていて、エミール・クストリッツァ監督の牧歌的要素も感じられてとても好きな映画でした)、ベテラン美術教師を演じるロベルト・ヘルリッカ、それぞれ個性の異なる三人の教師が生徒との交流から自分を見つめ直していくヒューマンドラマ。

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ジャック・マイヨールさんの海

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グスコーブドリも嘆くほどの日照時間の少ない夏でした。仕事、家事、育児と毎日が全力で、なかなかゆっくりとブログを綴る時間もありませんでした(ゴメンナサイ)。夏の炎天下、起伏の激しい困難な道程を、太陽を享受するように自転車に乗るのが好きで。でも、今年は思ったような青空にならず、ホントに残念でした。ですが、思い立ってジャック・マイヨールさんが子どもの頃、初めてイルカに出会った海まで行ってきました。 つづきを読む