久しぶりの更新になりました。秋ですね。ひと雨ごとに冬が近づくのでしょうね。綴りたいことはたくさんあるのですが、映画の話を。いま、KBCシネマで、イタリアのジュゼッペ・ピッチョーニ(Giuseppe Piccioni)監督の『ローマの教室で(原題:赤鉛筆、青鉛筆)』と言う映画が上映されています。ピッチョーニ監督作品によく出ているベテラン女優マルゲリータ・ブイと、『明日のパスタはアルデンテ』のリッカルド・スカマルチョと(『明日のパスタはアルデンテ』はコメディ映画でありながらストレートにLGBTを描いていて、エミール・クストリッツァ監督の牧歌的要素も感じられてとても好きな映画でした)、ベテラン美術教師を演じるロベルト・ヘルリッカ、それぞれ個性の異なる三人の教師が生徒との交流から自分を見つめ直していくヒューマンドラマ。
そのピッチョーニ監督が1998年に撮った『もうひとつの世界』。この映画が好きで。生涯を修道生活に捧げる儀式を控えている修道女カテリーナ(マルゲリータ・ブイ)が、公園を散歩していると見知らぬ人から「この赤ちゃんを預かってほしい」と、新生児を押し付けられてしまいます。その新生児が着ていたセーターにミラノのクリーニング店のタグが付いてあり、カテリーナはそのクリーニング店へ赴きます。店主でありながらスタッフの名前すら無関心なエルネスト(シルヴィオ・オルランド)は思い当たる節があり、彼女と一緒に母親を探すことに。一緒に母親を探し触れ合う中で、それぞれに心が揺れ、自分を覆っていた固いものが溶けていく。そのかすかな心の動きがもどかしいほどに感じられ、とても染み入りました。どのシーンも写真のような印象的な構図と、音を感じるような光(色彩)がとても美しく、懐かしさのようなあたたかさも感じる映画でした。
『もうひとつの世界』の予告編
物語は淡々と進むのですが、その平坦な物語に抑揚をつけているのが、ルドヴィコ・エイナウディ(Ludovico Einaudi)の叙情性のある音楽。イタリアを代表する現代音楽家で、マイケル・ナイマン(Michael Nyman)、マックス・リヒター(Max Richter)、ダスティン・オハロラン(Dustin O’Halloran)などがお好きな方はきっと、好きなはず(僕がそうなので)。そのルドヴィコ・エイナウディが来日(15日(水)、東京)します。秋にぴったりな染み入るピアノの音色。まだチケットも余っているようですので、お気に召された方はぜひ。