活字のある風景

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寺尾さんから譲り受けた活字。その多くは名古屋にある活字鋳造所さんで作られたものです。
届いた活字にはいつも手紙が添えてあり、激励の言葉に寺尾さんも
「がんばらんといかんね」といつも仰られていました。

その活字鋳造所さんが『東海モノ語り-技を守る・活字職人-』として、
29日午後2時05分からのNHK「お元気ですか日本列島」で放送されるそうです。
活版印刷にとって、もっとも大切な活字が生まれる風景をぜひご覧ください
(テレビがない暮らしなので、良かったら感想を聞かせてください…)。

それから、今。おそらく九州で最後の、活字鋳造所さんと対話を重ねています。
名古屋の鋳造所さんと同じような問題を抱えており、活版に携わる者としてどう未来に繋げて行くか、
しっかりと探っていきたいと思っています。

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momo

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福岡市社会福祉事業団が運営する地下鉄西新駅構内のお店
「momo」さんのポスターのようなサインをデザインしました。
消防法により燃える素材でのサイン設置は禁止されていて、燃えない素材を使って新しくしました。
momoさんは福岡市内及び近郊の福祉作業所で作られた商品を扱っているお店。
店頭スタッフの方も就労支援の場になっています。
閉ざされた場所でなくそういった直接的な社会との接点がある場所ではどのようなデザインが相応しいかを考え、
港のようにmomoに市内の商品が集められ様々なところに旅だっていくこともあり、
いかりをモチーフに「もも」のひらながなでデザインしました。今では西新駅にとけ込んでおり、ほっとしています。
ちなみに、momoさんでは福岡市内の図書館で借りた本も返すことができます。
結構、多くの方がそういう利用をされていて、momoが身近な存在になっていて嬉しくなりました。

ボレロ-Lifemap-

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障がいのある人の芸術活動を“可能性の芸術”として捉え、2007年より毎年開催している企画展「Lifemap」。今年ははじめて三菱地所アルティアムで開催されます。毎回テーマがありますが、今回は「ボレロ」。2名の作家を対にして計8名を紹介。作家の繰り返す表現と言うのは決して単調なものではなく、重なり続けるリズムが豊饒なものを生む。まるで“ボレロ”の様に。そういうことなのでしょうね。「wa56」号のインパクトのある表紙にもなった、オランダの知的障がい者アート施設「アトリエヘーレンプラッツ」に参加していたハイン・ディンゲマンス氏の作品も観れるのでとても楽しみです。



それから。3/9日にはイムズホールにて、鹿児島のしょうぶ学園のパーカッショングループottoとヴォイスグループorabuのライブも。映像作家、泉山さんの映像は、とても込み上げてくるものがあります。チケットは特設サイトができていますので、そちらでもぜひに。

音パフォーマンスパーカッションバンドotto&orabu Live in IMS
http://otto-orabu.marulab.org


エイブル・アート2013「ボレロ-Lifemap-」
http://artlier.jp/event/art-and-photography/2013/01/2013-lifemap-.html
2013年2月16日(土) ~ 2013年3月10日(日)
10:00~20:00 ※2月19日(火)・20日(水)は休館
三菱地所アルティアム
福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8F

[出展作家]
谷本光隆(長崎)、戸來貴規(岩手)、吉本篤史(鹿児島)、福満信夫(鹿児島)、鎌江一美(滋賀)、Belinda Tijssen(オランダ)、Hein Dingemans(オランダ)、Laan Irodjojo(オランダ)

[映像]泉山朗土(recomemo workshop & studio.)
[詩・ナレーション]濱野歩(工房まる)
[主催]三菱地所、三菱地所アルティアム、西日本新聞社、NPO法人まる、福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団

2,000部のブックジャケット

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帽子作家でもあるは昨年、帽子をほとんどつくることはありませんでした。
その訳は、一昨年前の暮れ、とある高校の理事長さんから思いがけない依頼があった為です。
理事長さんは生徒たちに本を読んで欲しい、活字に触れて欲しいとの願いから、
全校生徒に僕らのブックジャケットをプレゼントしたいと依頼されました。

冬のある日、僕らはさっそく学校に呼ばれ、校内を並んで歩いて案内して下さいました。
「この生徒たちが受けとりますから」と、やさしく、朴訥と話され
理事長さんの強い意思と、生徒達への温かな愛情を感じました。
学食を一緒に頂きながら「校訓と学校名を刷りましょう」と提案すると
「いや、いつもの宮沢賢治さんの言葉とあなた方の屋号が入ったものでお願いします」。
と、おどろく事を仰られました。
「本を読んで欲しいのはもちろんですが、今は1から2の間が欠けてしまっています。
その間には大切なことがあります。その間のことを生徒たちに伝えたい。
あなた方が大切にされている“人の気配”、まさにピッタリだと思いました。
今はわからないかもしれないけれど、社会に出て、いつか気づいてくれると嬉しい」。
僕らよりも僕らのことを理解してくださっているような気がして、とてもこそばゆかったです。
ですが、水面に浮かんだ葉っぱが月日をかけて湖の底にゆっくりと沈んでいくように、
染み入るように浸透した借り物ではない、その人の中から生まれた想いと言葉。
僕らは消費されるものではなく、自分たちの表現手段としてでもなく、
より人に寄添いその人のものになっていくようなものを作りたいと常々思っていて、
その想いが伝わりこの上ない幸福感に包まれ家路に着きました。
それまで、ひと月につくれたブックジャケットの数はおよそ30部ほど。
2,000部は途方も無い数でしたが、代え難い喜びがありました。

それから、妻は「紙漉思考室」さんの和紙を断裁し、折って、縫って、玉を留めて、印刷をし、検品をして、
それから梱包と、地道にコツコツと2,000部、1年かけて丁寧につくりました。
繰り返すということは簡単なようで実は一番難しいことなんだと、最近、妻を始め様々な方に教えてもらっています。
そして、ようやく先日無事に納品することができました。理事長さんは、感慨深く大層喜んでくださいましたが、
僕らの方が感謝してもし尽くしきれませんでした。
困難な時期もありましたが、次の世代へ活版を伝えれることや、ものづくりに真摯に向き合う時間を与えてくれたことなど、
何事にも代え難い一年を過ごさせてくださいました。
生徒たちの手に渡る日が今から楽しみで仕方がありません。物語が活字で印刷され、
そして手にした人たちにも物語が紡がれて行って欲しいとの願いから名付けた「物語のあるブックジャケット」。
思わぬかたちで僕らにも物語を紡いでくれました。

※依頼があった頃の話は「手の間」にも書いてくださっています。
ブックジャケットも手の間さんで販売しておりますので、よろしかったら。

ナガサキリンネ

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2013年度のナガサキリンネのプレスリリースとホームページの公開を行いました。
今回は、つくり手の公募、期間の延長、美術館での企画展などいくつかのチャレンジを行いました。
これからナガサキリンネがどこに向かうのか、ひとつのメッセージになるような気がしています。
子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、みなさんが心から笑って、楽しめるような場になれればと願っています。
3月に長崎でお会いできること、とても楽しみにしています。
企画内容やワークショップなどは現在調整中です。随時お知らせできればと思います。
それから。今回もナガサキリンネの本を制作中です。今回は親愛なる方たちをはじめ、
いろいろな方が文を綴ってくださりとても読み応えのあるものになりつつあります。
こちらもどうぞ、楽しみにお待ちください。

ナガサキリンネ| http://nagasakirinne.com