ここ数年の元日はまだ陽も登らぬ中、妻と自転車で福岡空港まで行き警備員さんに送迎デッキを開けてもらい、誰か知り合いが乗っている訳でもないのに、その年の初フライトを見送っていました。今年はせわしい暮れを過ごしたこともあり、ゆっくりと過ごしました。けれども、おのずと気持ちが向いて空港まで。
整備を終えた整備士さんが、手を振り深々と頭を下げ、旅立つ飛行機を見送る瞬間が好きです。それはまるで協奏曲を弾き終えお辞儀をするピアニストのようで、万感の拍手を贈りたくなります。柳田國男のどの本に書いていたかは忘れてしまいましたが、「いってらっしゃい」には、“行って、帰ってらっしゃい。そしてまた会いましょう”という意味があり、手を左右に振る行為は、お祓いと同じで手を振る事で旅立つ人の無事を祈ったと言います。そう想うと整備士さんの“いってらっしゃい”はもちろん、日本中で毎朝生まれる“いってらっしゃい”も、とても尊いものなんだと感じます。