とあるものづくりのプロジェクトで、甘木へ。西や東へは行けど、下に下ることは滅多にないので、せっかくなのでランドナーでサイクルツーリングを。初めてお会いしたにも関わらず、多くを語って下さりとても有り難く思いました。
最近、活版をやっていてつくづく良かったなあと思っています。自己表現としてよりは工芸的な美しさを追求しているのですが(と言いつつ職人と呼ぶには程遠いですが)、その魂のようなものを、出会う様々なものづくりの職人さんたちと共有できるときがあります。何ね、あんたこっち側の人間ねと、緊張感がほぐれ、ぐっと距離が縮まる瞬間があります。それはこれまでの、「デザイナーと職人」という関係では持てなかったもので、歓びや苦労を本音で話し合えるのがとても嬉しく思います。同時に、ものづくりの環境の理不尽さを感じることも多々あり、“そちら側”から社会にアプローチしていくのが、自分に与えられた役割なのかなあとも思います。
さて、せっかく甘木まで来たので秋月まで足を伸ばしてみました。新緑と紅葉の頃以外は初めてでした。観光客も疎らで、静かな普段の暮らしを感じることができました。帰路の途中、果実の美味しい季節なので道路沿いの果物屋さんでお土産に巨峰を買ったら「これから自転車で福岡に帰ると?これば食べて喉ば潤さんね」と、梨をむいて下さいました。とても甘くみずみずしく、少し力が涌きました。黄金色に輝く稲穂の脇では、彼岸花が咲き始めていました。そういえば、彼岸入りですね。季節を失念しない彼岸花にはいつも感心します。帰りには楽しみにしていた二日市温泉の源泉掛け流しの「博多湯」で汗を流しました。最近はさまざまな嗜好がどんどん熟年化している気がします。笑。福岡市内から往復120km。秋風に少し切なさを感じる小旅行となりました。