特別で、忘れ得ぬ時間

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今日の福岡の空は久しぶりに雲ひとつない澄み切った青でした。昨日の東京の同じ頃は既に陽が落ちていたので、随分と西は陽が長くなってきていることを感じます。20羽ほどの渡り鳥が自分には引けないような、きれいな直線の列をなして北へ帰っていきました。それに遅れて一羽、また一羽と忘れかけた想い出にあかりを灯すように、ゆっくりと後を追って帰っていきました。今日の夕陽がいつもと違って見えたのは、特別で、忘れ得ぬ週末を過ごしたからに他ありません。出会いは人を、風景を変えることを実感しました。

多摩美の公開授業、プレデザイン「デザインで、何を?」。片手で数えるぐらいしか訪れた事のない東京で、デザインを学ぶ人たちが集う美大で話すと言う、かけがえのない経験をさせて頂きました。学生の方だけでなくより外から多くの方々がいらっしゃって下さった事もとても嬉しかったです。心よりお礼申し上げます。冒頭、西村佳哲さんからオリエンテーションがありました。山が描かれた画像を示され、その頂上にいる人、その頂上を目指す人ではなく、最初から頂上は気にせず裾野で活動する人、すなわち裾野だから全方位で最前線。そんな“裾野派”の二組を今日は紹介しますと。こそばゆさを感じながらも自分で気付かなかった自分の居場所にとても嬉しくなりました。それから、裾野派は裾野にいるから滅多に会う機会はないけど絆は強いからこうして会うと励みになりますねと、エフスタイルのお二人も。とても胸が熱くなりました。

自己紹介の後、30分ほど「どんなふうに自分の仕事を育ててきたか」「その中でなにを大切にしてきたのか(いるのか)」とプレゼンテーションを行い、その後、西村さんによる公開インタビュー、そして会場に居合せた方々同士でやりとりをし、そして最後は質問の時間に。質問をして下さった方も、一緒に考えて下さった方も。みなさんと触れ合えた時間はとても大切なものになりました。ありがとうございました。次にエフスタイルのお二人も同様の内容で(お二人には本当に感銘を受けると同時に、より芯に近い所で通じ合えたので本当に嬉しかったです)。6時間…。と、最初は思っていましたが西村さんの仰る通り、過不足のないちょうどいいペースで、味わい、確かめた時間となりました。予定の19時を過ぎ1時間程の延長戦にも多くの方々が残ってくださいました。今回、西村さんは次のような事を思われていました。

多摩美の上野毛校は二部(夜間の大学)として始まった場所で、ふだんの授業は18時に始まります。そのため社会人学生も多く、高卒間もない学生から中高年まで、多様な年代の人間がたがいに学び合える、いい空間でした。が、ここ数年の経済状況の厳しさによるのか、社会人の割合は減り、せっかくの多様性はやや損なわれていて。この2日間はそれを補える機会になれば、と考えています。よその美大や、デザイン専門学校で学んでいる人たちも、どうぞお越しください。教育方針や指向性は学校ごと・講師ごとに違いますし、たとえ同世代でも、学生たちのモノの見方も異なるので。美大以外の教育機関の学生たちは、なお異なるのでウェルカムです。本人が自分の立ち位置を捉え直そうとするとき、遠い星というか、灯台というか、自身を相対化できる他者の存在はとても機能するはずなので、ぜひいろんな人にその場にともにいていただけたらと思っているわけです。

青い月の屋号の中にもある「月」は、自ら光ることはありません。月の光は、すなわち太陽の光。あなたがいて私たちがいるというその多様性は、さまざまな示唆を与え、思考を豊かなものにしてくれます。人と触れ合うことで、自分を知ることができ、ほっとします。たどたどしい私が何を伝えることが出来るのだろうかと不安でしたが、口々に良い時間だったと仰ってくださったり、また、あんなにも握手を求められたのは初めてでした。そのぬくもりは、力となります。週末の時間は、ただ本当に特別なものだったと言う事が分かるだけで、まだうまく言葉には出来ませんが、また日々に戻り、励んでいきたいと思います。本当に足を運んで下さりありがとうございました。心からの感謝を(感想、ありがとうございます。ゆっくりとお返事させていただきます)。