五足の靴

数年前、長崎、天草と活版印刷の源流を辿った際、そこにまるで先回りしたかのように、「五足の靴」の石碑がありました。それに限らず仕事で訪れた佐世保(四ヶ町アーケード横、夜店公園内)や、妻の故郷である唐津(唐津駅前)、そして地元である福岡(中州の川丈旅館)と、「五足の靴」の石碑を目にする機会が重なりました。それは、多分、読みなさいと言う事なのだろうと、「五足の靴」を読んでみました。

「五足の靴」は、与謝野鉄幹が、太田正雄、北原白秋、平野万里、吉井勇の4人を連れて九州を旅した紀行文。執筆者は「五人づれ」として匿名でリレートークのように、ひとりひとりが、訪れたその土地の事を書いています。その匿名性にユーモアを感じつつも、柳川が地元である白秋を除くと、九州は彼らにとって余程、遠かったのでしょう。中央との差を感じ、北部九州の街並や人々の暮しぶりを、辛辣に書いています。反面、唐津や千代の松原など風光明媚な場所の描写はとても美しく、今は無き当時の面影を感じることができました。と、言う訳でブックジャケットの九州編は、「五足の靴」で。引き続き、「手の間」さんで、購入できます。


(左)博多。屋形船の中にて。
(中)唐津。頷巾振山(鏡山)から。
(右)天草。パアテルさんは、信者が慕われていた大江教会の司祭、ガルニエ神父の事。