青春への恋文 -文芸誌「午前」とその周辺-

福岡市文学館(福岡市文学振興事業実行委員会・福岡市教育委員会)の企画展、『青春への恋文 文芸誌「午前」とその周辺』のアートディレクションを行ないました。

「午前」は戦後すぐの昭和21年に“福岡を編集した男”とも言われる、北川晃二や真鍋呉夫らが中心となって発行された文芸誌。今年生誕百年を迎えた檀一雄や、若き頃の島尾敏雄、庄野潤三、三島由紀夫なども寄稿しています。戦争によって“失われた青春”を断絶として捉えず、文学によって新しい時代を切開いて行こうという気高さや、ほとばしる情熱、その奥の深い葛藤などが刻まれています。ちなみに「午前」は、編集を務めた北川晃二とその意志を継いだ方々によって、地域に根差した文芸同人誌として今も福岡で継続されています。以下は「午前」創刊号の編集後記の眞鍋呉夫の言葉。

こゝに世代へのさゝやかな信頼と愛情のあかしとして「午前」を贈ります。文化の廃墟の中から謙虚な祈念で僕達は昭和の精神と立言します。決意として、愛として。僕達はここに世代の自他を含めて「午前」に僕達の祈念と開花の一切を賭けます。

彼らに敬意を払い、その想いを崩さないように、フライヤーは創刊号のサイズ、質感、雰囲気をそのまま残したデザインにしました。三島由紀夫の書簡なども展示されますが、その持ち主の先生から「なかなか洒落ていて素敵ですね。こだわり派だった三島氏もお喜びでしょう」と、嬉しい言葉を頂きました(このひと言でお酒を呑んだのは、言うまでもありません。10代の頃、東南アジアを旅したとき、着替えよりもむしろ三島作品や白樺派などの本の方が多かったのです)。

会場は、福岡市総合図書館(主に第一次「午前」や原稿、書簡など)と、福岡市赤煉瓦文化館(北川晃二が編集を務めた第二次「午前」以降)の2会場開催。すでにイベントはひとつ終了しておりますが、現在製作中の図録に合わせたイベントなども予定されていますので、また後日お知らせしたいと思います。


青春への恋文 文芸誌「午前」とその周辺
日時:2012年11月14日(水曜日)~2012年12月16日(日曜日)
場所:福岡市文学館(福岡市総合図書館・福岡市赤煉瓦文化館)
企画展概要@福岡市HP