デザインが届かない時間

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「デザイニング展」のトークイベント、「デザインが届かない時間」に、足を運んで下さいましてありがとうございました。僕自身もデザインというものを改めて考え直す大変貴重な時間になりました。心より御礼申し上げます。デザインの届かない時間というのは即ち、社会から見落とされている時間と言い換えても良いかと思うのですが(だからと言ってネガティブなものではありません)、そのような現場には手法や事例など存在せず、人の痛みや憂いを肌で感じながら、たくさんの失敗も重ねながらデザインを行ってきました。そんな中で気づいたのが、包含性を大切にしなければということ。所謂、感度の高い人たちにデザインは届きやすい。けれども、そうでない人たちにこそデザインは届いてほしい。何かのつかみ取りのように、上からひとくくりにざくっと掴むのが「包括」だとしたら、見落とされているものを見落とさずに下から包み含むのが「包含」だと捉えています。デザインされていることすら気づいてもらう必要のない、幅広い人たちに対する包含的でやわらかなコミュニケーション・デザインがこれからはますます必要とされてくると感じています。今回、お三方のデザインの届かない時間への眼差しや行動を伺えたこと、そして来場者の方々とそういった時間に対して、真剣に真摯に交流できたことは、本当に良い経験となりました。重ねて御礼申し上げます。またこのような場を与えて下さった事務局の皆様、ありがとうございました。本当はもっと話したかった、もっとちゃんと質疑に応えたかったという想いはありますが、むやみに言葉を並べるのではなく、これからも思案と行動のうえで、思慮深くデザインを行っていきたいと思います。今回お声をかけて下さった、たきたさんがfacebookに書いて下さっています。ここに記しておきたいと思います。

 

昨日のトーク「デザインが届かない時間 」。ご参加頂いたみなさん、ありがとうございました。ぼく自身もいろいろと思いを巡らすことができた貴重な時間になりました。「デザインが届かない時間」というタイトル。ちょっと分かりにくいかなぁ…という不安もありましたが、その意図するところについて、スピーカーだけでなく、参加者みなさんそれぞれが携えてきてくださって、とてもうれしかったです。最後に中川くんが、「デザインは街灯のようなものだと思っている」と語ってくれました。昼間はその存在に気付かないけれど、周囲が暗くなったら足下を照らしてくれるもの。だからといって、必ずしも「照らしている」と主張はしないもの。そして、ヒラノさんは「デザインで課題解決しようと思っていない」と言いました。デザインは確かに何らかの課題がないと成立しないもの。でも、そう捉える真摯な姿勢こそが、彼女の人格がにじみ出る、ピースフルなデザインワークへと結実させているようにおもいました。高須さんの質問に対して答えたように、今回、「届かない場所(空間)」ではなく「届かない時間」としたのは、眼前に在る物理的な空間ではなく、ぼくらの姿勢次第で変わっていくダイナミックな風景を尊重したい、という思いからでした。あの時ぼくらが届いていなかった風景。そこに辿り着いた時間に立ち会ったとき、少なからずひとりの人間としてのあり方が、誰かと共に生きるあり方が、希望という手触りとともに立ち現れる気がします。そして、その成立を助けてくれる営みこそが、デザインだと信じたいです。



今回、アルバスで今年で最も多い43名のみなさんに参加頂き、72,344円の参加費を頂きました。ほとんどのみなさんが1000円以上お支払い頂いて、感無量です。72,344円のうち、21,000円をデザイニング事務局にお渡しし、残り51,344円を、子どもシェルター「ここ」を運営するNPO法人「そだちの樹 」さんに寄付させて頂きます。「アルバス写真ラボ」は、4周年を迎えた4月30日(実はぼくの誕生日でもある)に、「アルバス」に名前を変えました。その背景にはデザインという営みに、もうちょっと深く向き合っていこうという意志があります。今後も酒井さんを中心に、みなさんと一緒にアルバムのような場をつくっていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。