ランドナーをつくる(2)

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今、乗っているランドナーはある意味、ユニバーサルデザインの自転車です。交通事故の後遺障害でドロップハンドルに備え付けられたブレーキを物理的に握ることができなくなりました。障害者申請を行っていないので、障害者でもなければ健常者でもないのですが実感として「障害」は“持つ”ものではなくて、むしろ“持たない(持てない)”ものであると感じるようになりました。その“持たない(持てない)”という身体的な負担を補うために、おじさんは2本の指だけでブレーキを掛けることができるようにデザインして下さいました。ユニバーサルデザインの自転車のパーツもたくさん出ているのですが、どれも“一般的”すぎてそういった新しいものを使わず、古いパーツで美観を損なわずに作って下さいました。新しいランドナーも、微妙なブレーキの場所を何度も調整しながら作ってもらっています。そう思うと、ユニバーサルデザインの小さな矛盾に気付きます。

行政の仕事をしているときも必ずと言っていいほど、「ユニバーサルデザインに配慮した〜」と言われます。けれども、ユニバーサルデザインの為に不特定多数の人たちに寄り添う程、そこからこぼれる人たちが必ず出てきます。言わずもがな、障害や置かれた状況は、人それぞれとても多様なものです。その設えられたユニバーサルデザインから、こぼれ落ちた人たちほど実は本当の意味でのユニバーサルデザインを必要としているという矛盾を孕んでいる気がしています。そう思うと行政はユニバーサルデザインの普及ではなく、まずは相互扶助への理解やアクセシビリティの向上を努めるべきなんじゃないのかなとも感じます。自分としては、ユニバーサルデザインの視点を持ちつつも、ダイバーシティであったりインクルージョンなどの、より具体的なところに眼差しと軸足を置いていたいなと思います。