漁師と海猫

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今回は岩手陸前高田の隣町、宮城気仙沼に宿をとりました。薄明かりの夜明け前、気仙沼の港を歩きました。生け垣に植えられた花を探しました。沿岸部に咲く花は、内陸部に咲くそれと違って、海とつながっていることを以前、耳にしました。その季節ごとに咲き出す花で、採れる魚がわかる花暦の役割もあるそうです。多くの漁師さんが船を失くしたことも聞きました。花を植えるという行為は、また再び漁に出るぞという漁師さんの強い意志の表れでもあると。

ぽたぽたと歩いていると、ふいに漁の準備をしていた漁師さんに声をかけられました。博多から来た事を伝えると、驚かれると同時に、これから海に出るから何も渡すものがないと。いえいえ、お気持ちだけで。大漁と無事をお祈りしますと伝えると、いやいや近くに養殖の世話をしに行くだけと聞いて、あ、そうなんですね。ズコっと。でも、船を失くして今は別の漁師の手伝いをしている。本当は沖に出たいんだと。楽しみにしてますね、と声をかけ、そうなるようにと心からお祈りしながら、船は僕が立っている場所まで、小さな波を立てながら養殖の筏のある方へ消えて行きました。

猫のような鳴き声が聞こえてきました。その声が聞こえる方へ足を進めるとたくさんのウミネコが、飛んでいました。飼い猫、まち猫、島猫それぞれに表情が違う様に、氣仙(宮城気仙沼や岩手陸前高田一帯)のウミネコはどこか端正な表情をしていました。でも鳴き声は猫のようなのは変わらず。たまに、長く鳴きすぎてヤギのような声になるウミネコもいて滑稽でした。せっかくなので一緒に僕も真似して鳴いてみました。そのすぐ近く。漁に出る漁師達を見守る様に立つ小さな高台に登りました。震災前は浮御堂が立っていたそうです。内陸の盛岡で育った石川啄木が初めて海を見たというその場所で、海の方に向かい手を合わせ、深くお祈りを。