身をゆだねて

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今回の東北行は、前回よりも早めのフライトだったので、余裕を持って自宅を出て空港で珈琲を飲んだりして、のんびりしていました。そしてそろそろと、手荷物検査に行くと、うっかりターミナルを勘違いしていて思いっきりダッシュをすることに。搭乗口に着き、何とか間に合ったと思っていたら今後は仙台空港が霧の為、山形空港か福岡空港に引き返す可能性がありますと伝えられ、でも乗らない訳にはいかず祈る様な気持ちで改札口を通りました。

離陸後、機内でいつものように星野道夫さんの本を読んでいたら、ゆっくりと心が鎮まっていきました。“森の木こりよ その木だけは残しなさい 一本の枝にも触れてはなりません 子どもだった頃、その木は私を守ってくれた だから今、私が守らなければならない”と、星野さんが森の中の小さな無人小屋で見つけたその詩がなぜだかその日は響きました。しばらくすると窓の外に印象的な火口をした山が見えてきました。浅間山でしょうか、白根山でしょうか。押し寄せる雲がまるで波のようで、その火口は波打ち際に誰かが作った砂山のようでもありました。そうこうしている内に、仙台空港に着陸できるという機長からアナウンス。ほっと胸を撫で下ろし、その後無事、仙台に降り立ちました。

仙台駅から盛岡行の新幹線「やまびこ」に乗り、岩手県一関駅で下車。同車内に乗車していた箱根山テラスのプロジェクトメンバーと合流し一路、陸前高田に向かいました。テラスの工事は順調。と、いうより棟上げの後の仕事の早さには驚くばかりです。テラスからは広田湾という無数の養殖の筏が浮かぶ、穏やかな海が見えます。その奥に普段は気仙沼方面の山並みが見えるのですが、その日は真っ白で全く見えませんでした。それは海からの風、山背(やませ)だと教えてもらいました。オホーツク海気団より吹く冷たく湿った風で、この季節だけ三陸一帯に吹くそうです。霧のようで、でもかたちがあって。それはそれは幻想的でした。普段目にしているのは日本海(玄界灘)。岩手に入ると植生が一気に変わるのを感じるのですが、こうして海の表情も随分と異なることを肌で感じました。

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2日間のミーティングを無事に終え、再び一ノ関駅へ。すると、うっかり時刻表を勘違いしていて、次の新幹線では飛行機に間に合わない事に気付きました。しまった…。けれども何故か、出発したはずの新幹線が止まっています。駅員さんに聞けば連結の為、6分ほど遅れているとのこと。「13番ホーム!今ならまだ間に合うからはやく行きなさい!」と、切符の変わりに証明書を頂き、ダッシュ(三段跳び)でホームへ。まさに滑り込みで間に合いました。息を整え無事、仙台駅に。

それから仙台空港行きの列車に乗り換え、仙台空港に着き、出発案内の掲示板に目をやると今度は福岡行最終の便に「欠航」の赤文字…。その日はJALのシステムトラブルで多くの便に遅れや欠航が出ているとは聞いてはいたものの、まさかでした。カウンターに行き、年配の男性の方のとても丁寧な説明を受けました。お詫びを重ねられたので、「いえいえ、JALのおかげで随分と東北が近くなっています(事実なので)。また乗ります」。と御礼を伝えると、ほころんでくださいました。そして別のフライトのチケットを頂き、無事福岡へ帰ってきました。珍道中はいつものことですが、いつか陸前高田に輪行で行こうと思っているので、どうなることやら。