成島和紙

震災以降、おおげさなことではなくて、営為として東北とかかわり続けるにはどうしたら良いだろうかと考えていた。僕らの暮しや仕事には紙はかかせないもので、日本最北端の和紙の産地が岩手にあると知り、その工房を訪ねて来た。子どもの泣き相撲大会で全国的にも有名な花巻市東和町成島地区の、成島(なるしま)和紙。元々は南部藩の御用紙であり、岩手の人々の母なる川、北上川の支流である猿ヶ石川縁域に50軒程の工房が軒を連ねていたという。和紙づくりは寒い時期が適していることもあり、成島地区の農閑期の作業として盛んに行なわれていたそうだ。現在は、訪れた青木さんのところが最後の一軒になったそうで、やはり淋しさを感じてしまった。看板猫のミミーはそんなことを知る由もなく、何とものんびりしていた。

原料は成島産の楮を、粘剤にはノリウツギを用いており寒期の流し漉きの作業で一気に強くてしなやかな和紙を仕上げるそうだ。見せて頂いた和紙はどれも、東北の土を感じるような素朴さと逞しさがあった。流し漉きはどちらかと言うと薄い紙に適していると思っていたが、厚い紙にも強さがあったのは意外だった。また青木さんは、表現のために何かを混入させたり、染めを行なったり、漂白することなどを好まれていなかった。川を汚すことにもなるから、と。余計なことや負荷をかけないそのままの姿勢であったり、消費や流通が最優先でないのは僕らも大切にしていて、恐れ多くも心が重なった気がして嬉しくなった。大事に使っていきたいと思う。