平和

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激戦のビルマに赴き、多くの戦友を失った祖父は生前よく、「平和がいちばん、平和がいちばん」と言っていた。子どもながら平和というものは何ともつかみどころがなく、曖昧模糊としていて、でも大きな“やさしさ”のようなものでしっかりと包まれている感じがした。たぶん、それで良いんだと思う。本来、子どもたちは、平和なんて意識しなくても良いんだと思う。平和なんて意識せず安心して過ごせるように戦争を経験した祖父の世代の人たちが、今の平和な世界を築いてくれたんだと思う。

言わずもがなこの世界は今を生きている人たちだけの世界ではない。未来を生きる子どもたちや、今を守ってきてくれた人たちの世界でもあると思う。もちろん、たくさんの動物たちや植物たち自然のものでも。僕たちはただ今を生きているだけであって、受け継がれたものを次の人たちに、より良くして渡すのが勤めなんだと思う。閉塞感と虚無感の被い方は止めどないけれども、それでも諦めずに希望を持ち続けることが、何よりの生きていく“エネルギー”になるんじゃないだろうか。

“私たちは、千年後の地球や人類に責任を持てと言われても困ってしまいます。言葉の上では美しいけれど、現実としてやはり遠すぎるのです。けれどもこうは思います。千年後は無理かもしれないが、百年、二百年後の世界には責任があるのではないか。つまり正しい答えはわからないけれど、その時代の中で、より良い方向を出していく責任はあるのではないかと”星野道夫