enjoy printing!

週末の夜になると、海外のレタープレスのプリンターさんたちのHappy printing!やEnjoy printing!の声が聞こえ始めます。その声にいつもそわそわ、わくわくしています。そのそわそわをおすそわけできればなと本好きから本好きへ、ささやかな贈り物を。ブックオカのメインイベント、「一箱古本市inけやき通り」が行なわれる11月3日(土)、ブックスキューブリックけやき通り店で「Enjoy printing!」を行ないます。キューブリックけやき通り店で、書籍を購入された方に活版印刷(レタープレス)のしおりをプレゼント。お店の前にプレス機を準備していますので、レシートと引き換えに一冊に一枚、紙を選び、ご自身でプレス(印刷)を楽しんでください。活字に触れて欲しいので、店主の大井さんに、文学の一節の引用をいくつかおねがいしています。そのひとつを。

「みんなに本を読んでもらいたい、文学者や詩人になるためではなく、もうだれも奴隷にならないように」
ジャンニ・ロダーリ

他にもいくつか引用を準備できればと思います。キューブリックのオススメ文庫を購入して、ブックオカ特製カバーに、キューブリックのオリジナルのレタープレスのしおりを。当日は美美さんの「モカに始まり」も店頭に並ぶ予定です。木漏れ日と秋風が心地良い今の季節。木にもたれ掛かって珈琲を飲みながら、ページをめくりたいですね。

長崎から京都へ

民俗学者である宮本常一さんの言葉ですが、自分にとってそれは、とてもクリエイティブなものだと感じ、クリエーションを行なう際、心に留めている言葉があります。

“日本人は独自な美をわれわれの生活の中から見つけてきておりますが、それはじつは生活の立て方の中にあるのだといってよいのではないかと思います。生活を立てるというのは、どういうことなのだろうかというと、自分らの周囲にある環境に対して、どう対応していったか。また、対決していったか。さらにはそれを思案と行動のうえで、どのようにとらえていったか。つまり自然や環境のかかわりあいのしかたの中に生まれでてきたものが、われわれにとっての生活のための デザインではないだろうかと、こう考えております。宮本常一『塩の道/暮らしの形と美』”

ナガサキリンネのプランニングを行なう中で、今の長崎を伝える為に、活字と出版のふるさとである長崎で広告に頼らず主体的に、意志を持って今“本を出す”と言う事はとても意義のあることだと感じました。その想いは伝播の速度は遅いかもしれないけれど、必ず誠実に伝わっていくと信じていました。その想いは京都まで届き、今週土曜日10/27日から11/9日まで、京都、恵文社一乗寺店で「ナガサキリンネ展」が開催される運びとなりました。先日、恵文社のスタッフの方が長崎まで足を運んで下さり、その想いをブログに綴ってくださいました。その伝播のあたたかさに、たまらなく嬉しくなりました。ナガサキリンネ展では、書籍「ナガサキリンネ」に載っている作家さんをはじめ、青い月の商品も幾つか展示販売されます。「手の間」さんの本も一緒というのが、なお嬉しいです。仕事の状況次第で変わる可能性がありますが、僕らも11/6、7、8日で京都に伺えればと思っています。関西方面の方、ぜひ今の長崎を感じにいらしてください。


ナガサキリンネ展
2012/10/27(土)-11/9(金)
恵文社一乗寺店 生活館ミニギャラリー
〒606-8184 京都市左京区一乗寺払殿町10
電話/ファックス:075-711-5919
出展者:Savon de Rin、SODAFACTORY、西村洋一、林潤一郎、吉田健宗、ナガサキリンネ

モカに始まり

珈琲美美店主の森光さんが、11/1日に手の間さんから書籍「モカに始まり」を出版されます。一気に読むには勿体なく、ドリップをするようにじっくりとゆっくりと時間をかけて深く味わいたい本です。それから、ますます珈琲の事が好きになりました。ページを開いては閉じ、開いては閉じ、何度もいつまでも大切にしたい本。ちなみに、本の巻末につける検品紙(40mm×40mm)は、森光さん自ら探してこられた200年程前のイギリス製の小さな小さな活版機を使って、ご自身で刷られています。珈琲のことは勿論、その探究心と仕事に対する情熱、スマートな心配りなど、多くを学ばせて頂いています。発売は11/1日から。予約を手の間さん、美美さんで承っておりますので、ぜひ。本当に愛おしくなる本です。以下抜粋。


『モカに始まり』 2012/11/1発行
イエメン、エチオピアのコーヒー産地を巡る貴重な旅の記録!一杯の珈琲から世界が見える。

訪れる観光客はまずいない、イエメン、エチオピアのコーヒー産地。山深い辺境の地に幾度となく分け入り、コーヒーの原点を探し続けた著者がその人生を尽くして見つけた珈琲の原点が、ここにある。貴重な写真をふんだんに使い、珈琲歴40年の著者が行き着いた豆の焙煎方法、美味なコーヒーのドリップ法まで詳細に記述。珈琲ファン必読の一冊です。

全216頁 定価2800円(送料1冊につき100円)
発行元/問い合わせ先 株式会社 手の間
〒810-0042福岡市中央区赤坂2-3-32赤坂MOKUZO2階
電話092-761-0395 FAX 092-761-6715

フィンランドのくらしとデザイン

レセプションへの招待を頂き、ナガサキリンネのスタッフと一緒に、長崎県美術館の企画展「フィンランドのくらしとデザイン」に行ってきました。導入は静かで深い湖を思わせる濃い青緑の空間に、日本画を感じさせる幽玄な木立の絵画が並べられ、森がつくられていました。前日、偶然にも湖まででかけ、その静けさと木立と影が織り成す、光の抱擁に満たされました。北欧展のデザインだからと、可愛らしさやデザイン賛美のような展示をイメージしていただけに良い意味で裏切られて嬉しかったです。その展示のコンセプトの様なものは最後まで続きます。自然、思想、古書、民間伝承など。そこから生まれる有機的な美しいデザイン(精神、心象)は、自然から離れたものではなく、また人間からも離れたものでもなく、その調和はとても落ち着き、身体にしっくりとくるもので、なぜ日本人が北欧のデザインを好むのかが、少しわかったような気がしました。展示作家ひとりひとりのひそやかな願い、喜びやかなしみ、言うなればひとりひとりがこころに持っている、深く碧いみずうみとそこから生まれる霧のようなものを感じる、静謐で美しい展示でした。静かな森と深い湖(海)と、あとはフィンランドの人たちが愛する野に咲く花々。私たちも愛するその花々も、春を告げるかのように光射す最後の空間に咲き誇っていました。長崎県美術館にて12月24日までの開催です。ぜひに。

長崎県美術館 | http://www.nagasaki-museum.jp/

福祉のデザイン

先週末は、国際ユニヴァーサルデザイン会議、ふくおか共助社会づくりフェアと、福祉のデザインについていろいろと考える時間でした。

せっかく、デザイナーとして独立したのだから、何のしがらみも持たず、ニュートラルな立ち位置で、誰かの役に立つ仕事を行なっていこう。見落とされているかもしれないけど必要とされる仕事を行なっていこう。と、意気込んでいたものの、福祉に関しては知らないことばかりで、体当たりを重ね数年が経ちました。悔しい想いや、役に立てないもどかしさもたくさん感じてきましたが、気付けば、福祉とデザイン(広報)について、人前で話す機会を与えてもらうようになりました。ですが、何が正解なのかわからないのが、正直なところです。発信することが是。果たしてそうなんだろうかと懐疑的な自分もいます。

ふくおか共助社会づくりフェアにも、講師として参加していたこともあり、当日は多くの懐かしい方々に会うことができました(みなさま、お久しぶりでした。嬉しかったです)。それで、ひとつだけ気付いたことがありました。何も意識して発信しなくても良いんじゃないかと。5年、10年と日々のその人の営み、その人の行ない、その人の存在そのものが充分に発信になっているということ。地道な轍は、浮ついた轍より、深くしっかりと刻まれていることを感じました。戦略は必要ですが、眼差しは遠くに、一歩一歩踏みしめて歩いて行く。志しを持った人が歩いていくことに専念できるように、茨を刈ったり、はきやすい靴を準備したりと、それがデザイナーとしてできることなのかな。と、今の僕なりの着地点です。

それから、もうひとつ。今年の始め立ち上げの際、デザインをてがけた「ふくおかかつぎてけいかく」。NPOなどの為のいわゆる、キャパシティビルディング(組織基盤強化)の支援を行なう福岡県のプロボノ事業ですが、かつぎて(スキル提供者)登録者が40名を越えたそうです。デザインだけでなく、会計や事業計画などさまざまな形で、サポートが始まっている報告例を聞いて嬉しくなりました。キャパシティビルディングという言葉を耳にする機会が随分と増えて来ました。それほど、根幹的なことなんだと思います。まさにお互いさまである、この取組みがより浸透していけばと願っています。